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神経発達症(発達障害)とは、しつけや環境などではなく脳の発達の問題で、言語や思考、社会的な対応などに影響を与える状態のことをいいます
発達の問題というと、病気や障害と受け取ってしまい、まだまだ抵抗をお持ちの方が多いように思います。脳の特性であり、「感じ方」や物事の「受け取り方」の違いです。「右利き」「左利き」の違いのようなものだと理解していただきたいです。時代の中で随分変わってはきていますが「左利き」は「右利き」が中心の一般社会の中では、まだまだ不便を感じられると思います。
それと同じなのです。理解が深まり環境が変われば、神経発達症(発達障害)児の不便さは軽減されるのです。日本人に多いとされ、問題とされるのはそのためだと思います。
神経発達症(発達障害)として扱われるものには、大きく分けると「ASD(自閉症スペクトラム障害)」「ADHD(注意欠陥多動性障害)」「LD(学習障害)」の3つに分かれます。それぞれの特性を示しますが、これらは個人によって症状や特性が異なるため、必ずしもすべての特性が当てはまるわけではありません。
ASD(自閉症スペクトラム障害)の特性
1. 社交的な困難: コミュニケーションや他人との関わり方が苦手
2. 興味の狭さと強さ: 特定の対象やトピックに強い興味を持ち、それに集中する傾向があります 3. ルーティンの重要性: 日常のルーティンや予測可能性が重要であり、変化に対する適応が難しい 4. 知覚の異常: 音や光、触覚などの刺激に対して過敏または過少感覚を示すことがあります。 5. 理解力と語彙の差異: 言語の理解には困難がある一方、特定の分野においては優れた語彙力を持つことがあります。 6. 情緒的な調節の難しさ: 自分の感情を適切に認識し、管理することに困難を抱えることがあります。 7. 制約した関心: 特定のパターンや規則に関心を持つことがあり、他の活動や関心が制約されます。 8. 直感的な知識の欠如: 社会的な予測や他人の意図を理解することに困難を抱えることがあります。 9. 運動の制約: 運動の発達が遅れたり、協調性や精密な運動に困難を抱えることがあります。 10. オーダーのニーズ: 物や情報の整理が難しく、オーダーやシステムを求めることがあります具体例
- すれ違いざまに挨拶をする時のタイミングがわからない
「相手との距離がこのくらいの時だよ!」と具体的な指示が有効 - 空気を読む、先を読むといったことが難しい
「あたりまえ」「常識」「ちゃんと」などが分からないので、具体的に「こうして欲しい」「これは良くない」を伝えると理解しやすい - 言葉の裏側や含み、ニュアンスを読むことが困難なため、言葉通りに受け取る
「エレベーターを呼んでおいて」と言われると、ボタンを押すのではなく「エレベーター!」と呼ぶ、といったことや、方言を使わないなど - 感情のコントロールが難しく、パニックを起こすことがある
- 一方的にしゃべり、相手の話を聞かない
- 勝ち負けに対するこだわりの強さ
- マイルールやパターンにはまりやすい など…
ADHD(注意欠陥多動性障害)の特性
- 注意力の欠如: 集中力が短く、注意を散漫にする傾向があります。
- 衝動性: 行動や発言が思慮に欠け、先に出る傾向があります。衝動的な行動を取り、後悔することがあります。
- 落ち着きのなさ: 身体的に静止することが難しく、いつも落ち着かない印象があります。
- 組織力の低下: 物事を整理し、計画を立てるのが苦手です。
- 指示の理解の遅れ: 複数の指示や詳細な指示を理解するのが難しいです。
- 忘れやすさ: 宿題やタスクの忘れ物が多い傾向があります。
- 集中力の問題: 難しい課題に取り組む際、長く続けることが難しいです。
- 時間管理の困難: 時間の使い方や予定の立て方が苦手です。
- 難しい課題への取り組みの問題: やる気が上がりにくく、難しい課題に対して取り組むのに苦労します。
- 認識の遅れ: 知識や認識力の習得が通常より遅いです。
- 心理的な緊張: 新しい状況やプレッシャーに対して敏感に反応します。
- 協調性の低下: グループの中で相手の意見を尊重することが難しいです。
- 注意の切り替えの困難: 一つのことに集中している際、他のことに注意を切り替えるのが難しいです。
- 表現の困難: 自分の思いや感情を適切に言葉で表現することが難しいです。
- 心の躁鬱: 気分の波が激しく、喜怒哀楽の感情の変化が大きいです。
具体例
- 順番が待てない
- じっとしていられない、落ち着きがない
- 衝動的に声を出したり、行動したりする。ほかの人が話していても話したくなると割り込んで話し出してしまう
- 目に入ったものが気になり、今していることを忘れるため、片づけをせずにどんどん次の遊びに移り部屋が散らかったり、片づけができない
- 好きな事には集中するが、興味のない事をすることを嫌がる
- 一度に複数の指示を出されると理解できない。ひとつずつ指示を出す工夫が必要
- 感情をうまく言葉で表現することが苦手なため誤解される。場面に合わせた伝え方や言葉を具体的に教える必要がある
- 相手の意見を尊重することが難しく、「自分勝手」にうつる など…
LD(学習障害)の特徴
LD(学習障害)と呼ばれるものには主に3つのタイプがあります。
- 読字障害(ディスレクシア)
音韻処理不全:文字と音が紐づけできない・単語が理解できない・音を記憶できない
視覚情報処理不全:文字が滲んだりぼやけて見える・文字が歪む・鏡文字に見える・点描画に見えるなど - 書字障害(ディスグラフィア)
音韻処理不全:文字と音が結びつかない・文字を単語のまとまりにできない
視覚情報処理不全:文字の形を認識できない・位置関係が覚えられない - 算数障害(ディスカリキュア)
簡単な計算ができない・時計が読めない・九九が覚えられない・図形が理解できない・自分で計算式をたてられない・そもそも数の概念が理解できない
具体例
- ひらがなや漢字を繰り返し練習しても読めない
- 指で追わないと文字が読みにくい
- 音読を嫌がる
- 板書ができない
- マス目に合わせて文字が書けない
- 鏡文字になってしまう
- 文字を書くのを嫌がる
- 数字を覚えられない
- 時計を読めない
- 繰り上がり、繰り下がりの理解ができない、筆算で桁を合わせられない など…
これら3つのそれぞれの症状が、複雑に混ざり合っていることが多く、個々によって症状は様々です。そのため、専門家の診断と支援を受け、その子自身の「障害を起こしている特性がなにか」をしっかり理解し、対応することが重要となります
これらの特性は、私たち皆、誰もが少なからずいくつかは当てはまるものであり、個性と捉えることができます。これらが、あくまで脳の発達によるものなのか否かを判断することは、成長期の子どもにとっては難しいところであり、親の悩むところではないでしょうか?
ただ、学校や社会生活の中で問題が起きているようでしたら、対処は早いに越したことはありません。ぜひ、悩んでいるのであれば専門家に相談してみてはいかがでしょうか?